猿八座が、佐渡猿八で誕生してから、30年だそうです。私の芸歴は32年となりましたが、猿八座の座付きになってから14年ですから、ほぼ半分は猿八座で語っていることになります。そして、いつも公演企画をしていただいている「ドナルドキーンセンター柏崎」が12周年の会館記念日を2025年9月21日に迎えました。
そんなこともあって、久しぶりに二人三番叟を演じました。言祝ぎ、予祝の三番叟をご覧ください。
この作品は、猿八座オリジナル三番叟です。作詞は師匠の西橋八郎兵衛、作曲は八太夫です。文弥節・説経節・長唄の曲節を自在に使った珍品といえましょう。連れ弾きの石井紫猿(しおん)は三味線のデビュ-でした。半年の稽古の成果が現れました。
本題の演目は、近松門左衛門の平家女護島第二段目。所謂「俊寬」の場面ですが、近松作品の面目躍如たる所は「女性」でありましょう。大変細かい女性の描写が続きます。この「女護島」というのは、女性ばかりの島のことで、井原西鶴の好色一代男に出てきます。いったい、平家の女護の島とは?いったい何をさしているのでしょうか?話は、まだまだ、この後、すさまじい展開となるので、二段目だけで、鬼界ヶ島のことだとは言い切れません。前半の展開の中心にいるのは、俊寬というよりも島の海女「千鳥」であるのは確かです。その後も都に行った千鳥が、まるで俊寬の分身のように登場します。そして、源氏の再興の為に美人局をする常磐御前、既に清盛の為に自害した東屋、この女性群像が「女護島」では?ないのかなあと思って語っています。
さて、この猿八座、段々と高齢化してはいますが、新しい座員も加わって、常に新しいチャレンジをしています。11月9日の村上公演では、新作「桃太郎 昔話」が演じられます。