2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧
弘知上人六段目 その時、弘嗣は法印に近づき、 「今まで、師匠様とばかり思っていましたが、本当は父上様だったのですね。」 と大喜びです。弘知法印ははこれを聞いて、 「もっと早くに名乗って、喜ばせようとは思っていたが、恩愛の執着は大変強いもの であ…
弘知上人五段目 それから、弘知法印は、弘嗣の手を引いて高野山を目指しました。しかし、遙かなる 越路は、幼い足には、つらい旅です。やがて法印は、弘嗣を負ぶって歩きました。 あるところまで来ると、弘嗣はこう言いました。 「のう、お師匠様。お話した…
弘知上人四段目 弘知法印が高野山に上ってから、既に七年の年月が流れました。弘知法印は、修業を 積んで、六根清浄の大知識となりましたが、さすがに望郷の念断ちがたく、修業がてらに 越路へと足を向けました。加賀と越中の国境である倶利伽羅峠(石川富山…
弘知上人三段目 その後、弘友は、心に懸かることはもう無いと、高野山を目指すことにしました。その 途次、弘友は、柏崎にある越後の高野山と言われる国分寺の五智如来にやってきたので した。この如来と申すのは、四十五代聖武天皇の勅願によって、行基菩薩…
弘知上人二段目 その2 さて、その頃館では、柳の前が、事の次第がどうなったと、そわそわとしていました。 柳の前は、千代若を抱いて、館を出たり入ったりしながら、義父秋弘が弘友を、無事に 連れて帰って来るのを待っていたのでした。居ても立っても居ら…
弘知上人二段目 その1 荒王は在所の者達に介抱されて、ようやく弘友のもとに戻りました。荒王は、 「我が君におかれましては、御怪我はありませんか。私は、命には別状はありませんが、 足の筋を切られて足腰も立ちません。命があってもお役にも立てません…
弘知上人初段 さて、つくづく、人間界の善悪を観察してみると、「色声香味触法」(しきじょうこう みそくほう)と言って、六つ穢れた世界に迷って、六根に作る罪咎が輪廻の連鎖を引き 起こしている。いったいいつになったら、この輪廻から逃れることができる…
越後国柏崎 弘知法印御伝記 江戸孫四郎正本 大伝馬三町目うろこがたや新板 貞享2年(1685年) 大英博物館所蔵 この古説経は、昭和37年に早稲田大学の鳥越文蔵先生が大英博物館で発見されたものである。この正本は、日本国内にはもう存在していないと…